空き家の生前贈与にかかる税金・費用を解説|贈与税の他にかかるお金とは

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空き家の生前贈与にかかる税金・費用を解説|贈与税の他にかかるお金とは

  • 親が介護施設に入っており、実家が空き家になっている
  • 親が健在のうちに実家について話し合いをしておきたい
  • 空き家になる家を生前贈与したいけど、税金がどのくらいかかるか不安

空き家の生前贈与は、親族に財産を引き継ぐ有効な手段ですが、手続きにかかる税金や費用の理解が不十分なままだと、思わぬ出費で困ることがあります。贈与税だけではなく、不動産取得税や登録免許税など、見落としがちな費用に注意が必要です。

この記事では、空き家を生前贈与する際にかかる税金や費用について分かりやすく解説します。記事の読めば、金銭面で、生前贈与について困ることが少なくなります

空き家の生前贈与には、贈与税、不動産所得税、登録免許税などの税金や司法書士費用、税理士費用などの費用がかかります。この機会に税金・費用を軽減するコツも押さえて、生前贈与を有効な手段として活用できるようにしましょう。

生前贈与と相続の違い

生前贈与と相続の違いは、財産の所有者が生きているか、亡くなっているかという点です。

  • 生前贈与:財産の所有者が生きている間に行う手続き
  • 相続:財産の所有者が亡くなった後に行われる手続き

生前贈与とは

生前贈与とは、財産の所有者が生きている間に、その財産を家族や親族などに譲り渡すこと。不動産や現金、有価証券、その他の財産が対象となります。

生前贈与を行う場合、贈与を受けた人(受贈者)は、受け取った財産に応じて贈与税を支払う義務があります。贈与税は、相続税と比べて税率が高く設定されているため、財産の評価額や贈与時期を計画的に検討する必要があります。

空き家を生前贈与するメリットは以下のとおり。

  • 親族間の争いを防ぐ
  • 財産をスムーズに移行できる

空き家の所有者があらかじめ相続する人を決めることができるため、所有者が亡くなった後の親族間の争いを防ぐことができます。空き家の評価額が高い場合や、感情的な価値がある場合、トラブルになる可能性があります。生前に名義を変更しておくことで、誰が空き家を所有するかを明確にし、トラブル防止に繋がります。

財産をスムーズに移行できる点もメリットの一つ。生前贈与は相続と比べ、比較的スムーズに財産を移行することが可能。贈与は特例や基礎控除など税の軽減制度があるため、長期的な計画で贈与を進めることで節税できます。

一方、空き家の生前贈与には以下のデメリットもあります。

  • 現在の評価額が高い場合、税負担が大きい
  • 不動産所得税や司法書士費用などがかかる

贈与税は贈与時の評価額で計算されるため、現在の評価額が高い場合は、税負担が多くなります。逆に将来、評価額が高くなると予想される場合は、評価額が低いうちに生前贈与すると税負担が少なくなります。

生前贈与を行う場合、贈与税の他に不動産所得税、登録免許税などの税金や司法書士費用、税理士費用などの費用がかかるため、注意が必要です。

相続とは

相続とは、財産の所有者が亡くなった後に、その人の財産が相続人に分配される手続きのこと。遺言書がある場合、遺言書に記載された内容に従って財産が分配されます。遺言書がない場合、法定相続分に従って財産が分配されます。被相続人の配偶者は常に相続人となり、血族相続人(子・直系尊属・兄弟姉妹)には以下のよう優先順位があります

  1. 直系尊属(父母、祖父母など)
  2. 兄弟姉妹

法定相続人とは、民法で定められた各相続人の相続分をいいます。同順位に複数の相続人がいる場合、相続分を均分します。配偶者がいる場合の法定相続分は以下のとおり。(配偶者がいない場合、各順位内で均分相続)

  • 相続人が配偶者のみ:配偶者が全て相続
  • 相続人が配偶者と子:配偶者1/2 子1/2
  • 相続人が配偶者と直系尊属:配偶者2/3 直系尊属1/3
  • 相続人が配偶者と兄弟姉妹:配偶者3/4 兄弟姉妹1/4

空き家相続の流れは以下のとおり。

  1. 相続人の確認
  2. 遺言書の確認
  3. 相続財産の調査と評価
  4. 遺産分割協議
  5. 相続登記
  6. 相続税の申告と納付

相続税の計算手順は以下のとおり。

  1. 各相続人の課税価格をいったん合計する
  2. 遺産に係る基礎控除(※1)を差し引く
  3. 課税遺産総額を計算する
  4. 課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して、各人の仮の相続税額を計算する(※2)
  5. 各人の仮の相続税額を合算して相続税の総額を算出する

※1 基礎控除額=3000万円+600万円 ✕ 法定相続人の数

※2 税額=法定相続分に応じた取得金額 ✕ 税率ー控除額

法定相続分に応じた取得金額税  率控  除   額
1000万円以下10%
1000万円超  3000万円以下15%50万円
3000万円超  5000万円以下20%200万円
5000万円超  1億円以下30%700万円
   1億円超  2億円以下40%1700万円
   2億円超  3億円以下45%2700万円
   3億円超  6億円以下50%4200万円
6億円超55%7200万円
相続税の税額(速算表)

相続人各人の納付税額計算手順は以下のとおり。

  1. 上記で計算した相続税の総額に、実際の按分割合(各人が実際に受け取った課税価格の割合)を掛けて各人の算出税額を算出する
  2. 算出税額から各人の税額控除(※3)を差し引く
  3. 各人の納付税額を算出する

※3 相続税の税額控除(贈与税額控除・配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除等)

空き家を引き継ぐ方法として、生前贈与か相続の二つの方法がありますが、以下の場合は、生前贈与が有利に働く可能性があります。

  • 相続人が複数おり、親族間の争いが予想される場合
  • 今後価値が大幅に上がることが予想される場合
  • 受贈者が空き家に居住する場合

家の相続は、遺産分割協議がまとまらず、トラブルになる可能性があるほか、相続で共有名義とした場合、意見が一致しないと売却や修繕が困難になることがあります。生前贈与は、所有者が生きているうちに贈与する相手を選ぶことができるため、親族間の紛争を防ぐことができます。

今後、家の価値が大幅に上がることが予想される場合も、生前贈与が有利に働くことがあります。贈与税は贈与時の評価額で算出されるからです。価値が大幅に上昇した後、相続すると税金が高くなる可能性があります。

受贈者が空き家に居住する場合も、生前贈与すれば、早めに所有権を移転することができ、受贈者の生活設計がしやすくなるメリットがあります。

空き家の生前贈与にかかる税金(贈与税・不動産取得税・登録免許税)

空き家の生前贈与にかかる税金は以下のとおりです。

  • 贈与税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税

贈与税

贈与税は、贈与された財産に対して課される税金で、生前贈与において最も大きな負担となる場合が多いです。受贈者(財産を受け取った人)が支払う義務があり、課税額は財産の評価額に応じて決まります。

課税主体(誰が課税するのか)国(国税)
課税客体(何に対して課税するのか)贈与を受けた財産(不動産、現金、有価証券など)、生命保険金や債務免除も「みなし贈与財産」
納税義務者(税金を納めるのは誰か)贈与を受けた人(受贈者)、贈与者ではない点に注意
課税標準(税額を算定する基礎となる金額)贈与財産の評価額から基礎控除額(年間110万円)を差し引いた金額
税率(税金を課す割合)累進課税(10%〜55%)、特例贈与財産と一般贈与財産で税率は異なる

直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与により財産を取得した受贈者(財産の贈与を受けた年の1月1日において18歳以上である者に限る)は特例税率を適用できます。特例税率を適用できる財産のことを「特例贈与財産」、それ以外の財産を「一般贈与財産」といいます。

贈与税の税額は、以下の計算式と速算表から算出されます。

税額=課税価格✕税率−控除額

基礎控除後(年間110万円引いた後)の課税価格税  率控 除 額
200万円以下10%
200万円超 
400万円以下
15%10万円
400万円超 
600万円以下
20%30万円
600万円超 
1000万円以下
30%90万円
1000万円超
1500万円以下 
40%190万円
1500万円超
3000万円以下 
45%265万円
3000万円超
4500万円以下 
50%415万円
4500万円超55%640万円
特別贈与財産用(特例税率)
基礎控除後(年間110万円引いた後)の課税価格税  率控 除 額
200万円以下10%
200万円超
300万円以下
15%10万円
300万円超
400万円以下
20%25万円
400万円超
600万円以下
30%65万円
600万円超
1000万円以下
40%125万円
 1000万円超
1500万円以下  
45%175万円
1500万円超
3000万円以下 
50%250万円
3000万円超55%400万円
一般贈与財産用(一般税率)

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得した際に課される地方税

課税主体(誰が課税するのか)不動産が所在する都道府県(道府県税)
課税客体(何に対して課税するのか)取得した土地や建物(売買や交換、贈与を含む、登記の有無も問わない)
納税義務者(税金を納めるのは誰か)現実に不動産の所有権を取得した者
課税標準(税額を算定する基礎となる金額)固定資産課税台帳に登録されている価格
住宅取得の場合、特例(※4)により最大1200万円の控除あり
税率(税金を課す割合)住宅以外の家屋は本則どおり4%、土地および住宅は特則で3%
納税方法普通徴収

※4 住宅の課税標準の特例

住宅を取得したときの課税標準を少なくする特例。既存住宅(中古)の場合、控除額は、最高1200万円。(建築後の経過年数によって金額が異なる)特例が適用される住宅の床面積は、50㎡(戸建以外の新築の賃貸住宅は40㎡)以上240㎡以下。

登録免許税

登録免許税は、不動産を登記するときにかかる国税

課税主体(誰が課税するのか)国(国税)
納税義務者(税金を納めるのは誰か)不動産登記を受ける者
登記を受ける者が2人以上いるときは連帯して納付
課税標準(税額を算定する基礎となる金額)固定資産課税台帳に登録されている価格
実際の取引価格でない点に注意
計算方法登録免許税=課税標準 ✕ 税率
納税地納税義務者が受ける登記等の事務をつかさどる登記所等の所在地
納税義務者の住所地でない点に注意
納付時期登記等を受ける時
納付方法原則、現金納付

登録免許税の税率は以下のとおり。

登記の内容本則建物の特例土地の特例
所有権保存登記0.4%0.15%
所有権移転登記(売買)2%0.3%1.5%
所有権移転登記(相続)0.4%0%
所有権移転登記(贈与)2%
所有権信託の登記0.4%0.3%
抵当権設定登記0.4%0.1%
登録免許税の税率

「建物の特例」の対象となる「建物」とは、新築または取得(売買または競落に限る、相続・贈与・交換は含まれない)する住居用家屋であって、次の適用要件を満たすもののこと。過去にこの特例の適用を受けた場合でも、次の適用要件さえ満たせば再度適用を受けることができる。

  • 個人が自己の居住用の住宅として使用すること
  • 新築または取得後1年以内に登記すること
  • 床面積が50㎡以上であること
  • 既存住宅の場合は、新耐震基準適合住宅であること(昭和57年1月1日以降に建築された住宅は、新耐震基準適合住宅であるとみなされる)

空き家の生前贈与にかかる税金を軽減する制度

空き家の生前贈与にかかる税金を軽減する制度は以下のとおりです。

  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税制度

暦年贈与

暦年贈与とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与された財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかからない制度のこと。毎年、基礎控除額(110万円)を活用して少額ずつ財産を贈与すれば税金を大幅に軽減できる可能性があります。

不動産は自分の持分を細かく分けて、贈与することができます。一つの不動産を複数の人で所有する際、各所有者の権利の割合のことを共有持分といいます。自分の持分の中で、更に細かく不動産を分割して、毎年、基礎控除額の範囲内で贈与すれば贈与税を0円にすることも可能です。具体例を以下に示します。

【具体例①】評価額1100万円の空き家を、一度に全て長男に贈与する場合

親から子への贈与のため、特例税率を適用(特例税率と控除額は先述の速算表参照)

1100万円(評価額)ー110万円(暦年贈与の基礎控除額)=990万円

990万円 ✕ 税率30%(特例税率)ー90万円(控除額)=207万円(贈与税)

【具体例②】評価額1100万円の空き家を、1年ごと持分10分の1ずつ贈与する場合

1回の贈与額は、1100万円の10分の1なので、110万円

110万円(評価額)ー110万円(暦年贈与の基礎控除額)=0円(贈与税)

2年目以降も同様、贈与を10回に分割することで贈与税が0円

暦年贈与を行う場合、贈与の都度、贈与契約書を作成しておくことが重要です。口頭だけのやり取りでは「贈与の事実」が証明できず、後々トラブルになる可能性があります。また贈与税がかからなくても、司法書士費用や税理士費用が毎年、その都度かかるため、注意が必要です。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、生前贈与を一定額まで非課税とし、相続時にまとめて精算する制度のこと。累計で2500万円までの贈与が非課税となり、非課税枠を超える場合の贈与税は一律20%で計算します。

適用対象者贈与者:贈与年の1月1日における年齢が満60歳以上の父母または祖父母
受贈者:贈与年の1月1日における年齢が満18歳以上の推定相続人である子
    または満18歳以上の孫
特別控除額贈与財産の合計が2500万円まで非課税
非課税枠を超える分は、一律20%課税

相続時精算課税制度を選択する場合、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、相続時精算課税制度選択届出書を税務署に提出する必要があります。

相続時精算課税制度のメリットは以下のとおり。

  • 贈与税の節税
  • 相続税対策ができる
  • 財産の早期移転が可能

2500万円まで贈与税がかからないため、まとまった財産を贈与したい場合に有効です。贈与財産は、相続財産として加算されますが、相続税の課税価格として加算される金額は贈与時の価格になるため、不動産や株式など、後々価格が上がりそうな資産を早めに贈与することで、相続税対策になる可能性があります。子ども孫に早期に財産を移転し、相続の準備をすることで、相続争いの防止にもつながります。

一方、相続時精算課税制度には、以下のデメリットもあります。

  • 相続税に精算が必要
  • 暦年贈与の適用を受けることができなくなる
  • 手続きが複雑

贈与財産は、相続財産に加算され、相続時にまとめて相続税を払うことになるため、一度に多くの税金が発生する可能性があります。

相続時精算課税制度を選択した場合、暦年贈与(年間110万円までは贈与税がかからない制度)の適用を受けることができなくなり、相続時精算課税制度が適用されると、暦年課税に戻ることができなくなるため、慎重な判断が求められます。

贈与時と相続時の両方で申告が必要となり、相続税の計算が複雑になる点も相続時精算課税制度のデメリットといえます。

空き家の生前贈与にかかる費用(司法書士費用・税理士費用)

空き家を生前贈与する際には、税金だけでなく、以下の費用が発生します。

  • 司法書士費用
  • 税理士費用

司法書士費用

空き家を生前贈与する場合、5万円〜10万円程度の司法書士費用がかかります。生前贈与では、不動産の名義変更(登記)を行う必要があります。この際、専門知識が求められるため、司法書士に手続きを依頼するのが一般的。司法書士費用は、手続きの内容や物件の評価額によって異なります。司法書士費用の内訳は以下のとおりです。

  • 基本報酬 5万円〜7万円程度
  • 書類作成費 1万円〜3万円程度
  • 交通費・通信費 数千円程度

税理士費用

空き家を生前贈与する場合、5万円〜10万円程度の税理士費用がかかります。不動産に関する税金の申告は複雑である場合が多く、税理士に手続きを依頼することが一般的。高額な不動産の贈与や特例を適用する場合などは費用が更に高くなる場合があります。相場は以下のとおり。

  • 基本料金 5万円程度
  • 相談料 1時間5千円〜1万円程度

空き家の生前贈与にかかる費用を抑える方法

生前贈与には司法書士費用や税理士費用等がかかりますが、以下の方法で費用を抑えることができます。

  • 相見積もりを依頼する
  • オンライン申請を検討する
  • 繁忙期を避ける

相見積もりを依頼する

相見積もりとは複数の見積もりを取ること。司法書士や税理士を依頼する際は、必ず複数の事務所に見積もりを取りましょう。費用やサービス内容は事務所によって異なります。時には数万円程、費用を抑えることができることも。無駄な出費を抑えられるだけでなく、自分に合った専門家を選べる確率も上がります。

オンライン申請を検討する

オンライン申請を利用すれば、費用を削減できる可能性があります。登記や税金の申告手続きの一部は、オンラインで完結する場合も。オンラインを活用し、自分でできることは自分でやりましょう。わざわざ出向く必要がなくなり、時間を節約できる点もオンライン申請を利用するメリットの一つです。

繁忙期を避ける

税務や登記手続きが集中する繁忙期は、費用が割高になる場合があります。司法書士費用や税理士費用を抑えたい場合、繁忙期を避けて依頼しましょう。司法書士は不動産登記が活発な3月〜5月、年末の駆け込み需要が増える12月などが繁忙期となります。税理士は確定申告がある2月〜3月や法人の決算期が繁忙期となります。比較的空いている時期に依頼することで、割引が適用される場合もあるため、依頼するタイミングは重要です。

空き家の生前贈与は贈与税・不動産取得税・登録免許税・司法書士費用・税理士費用等がかかる

空き家の生前贈与には、贈与税や不動産取得税、登録免許税のほか、司法書士費用や税理士費用等の費用がかかります。予想以上に出費がかさむケースもあるため、税金を軽減する制度や無駄な費用を抑えるポイントをしっかり理解し、適切な対応を取れるようにしましょう。

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