【物件状況等報告書とは】家の売買でトラブルを回避するための基礎知識を解説

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【物件状況等報告書とは】家の売買でトラブルを回避するための基礎知識を解説
  • 家を売買する際に必要になる書類について知りたい
  • 物件状況等報告書の書き方が分からない
  • 家を売りたいけど、トラブルにならないか心配

家の売買において「物件状況等報告書」は非常に重要な書類のひとつ。しかし、書き方などを正しく理解していないと後に買主とトラブルになり、訴訟等に発展する可能性も。

この記事では、物件状況等報告書について初心者にも分かりやすく解説し、家を売買する際のトラブルを防ぐための基本的な知識を紹介します。

物件状況等報告書は、不動産取引において非常に重要な書類であり、物件の状態を正確に把握し、双方の理解を深めるためのツールです。正確に作成することで、買主と売主の信頼関係を構築し、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

物件状況等報告書とは物件の状態が詳細に書かれた書類

物件状況等報告書とは、物件の現在の状態や過去のトラブル、修繕履歴などを記載し、売主が買主に物件の詳細を正確に伝えるための書類のこと。告知書や物件状況確認書と呼ばれることも。役割や重要性等は以下のとおりです。

物件状況等報告書の役割

物件状況等報告書の役割は、不動産売買におけるトラブルを防ぐこと。不動産売買は、高額な取引となるため、契約後に「知らなかった」「説明されていなかった」といったトラブルが生じやすいもの。雨漏りやシロアリの被害などは内覧しただけでは分からないことが多いですが、売買後に発覚すると、買主が大きな不利益を被ることになります。物件状況等報告書を作成することで、売主は物件の現状や修繕歴を正確に伝え、買主に正しい情報を提供することができ、トラブル防止に役立ちます。

物件状況等報告書は中古住宅の売買で活用される

物件状況等報告書は、中古住宅の売買で活用されます。新築物件に比べて、長年の使用により物件にさまざまな問題が生じている可能性が高いため、買主にとっては物件の過去や現状を知ることが非常に重要だからです。過去にどのような修繕が行われたか、現在どうのような不具合があるか、これを明確にすることが取引の透明性を高めます。

物件状況等報告書の作成義務はない

物件状況等報告書の作成自体は法律で義務付けられているわけではありません。しかし、多くの不動産業者や売主が自主的にこの報告書を作成し、取引をスムーズに進めるための手段として活用しています。買主が安心して契約を進めるためには、売主が物件の状況をしっかりと開示することが不可欠です。報告書がないと買主側から信頼を得にくくなり、契約のキャンセルや価格交渉の材料とされることもあります。報告書があることで、買主もより安心して購入を進めることができ、信頼関係が築けます。

国土交通省も告知書(報告書)の提出について、積極的に行うことが望ましいと見解を示しています。

不動産の売主等による告知書の提出について(引用)
宅地又は建物の過去の履歴や性状など、取引物件の売主や所有者しか分からない事項に関し、売主等から協力を得られるときにおいて告知書を提出してもらい、これを買主等に渡すことについては、建物状況調査の活用と併せて、告知書のより買主等へ状況提供の充実が図られることで、将来の紛争の防止に役立つなど、宅地又は建物の円滑な流通を促進することが期待されることから、積極的に行うことが望ましい。

>>国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」について(外部サイト)

物件状況等報告書の記載事項(マンション・戸建て別)

物件状況等報告書には、物件の状態に関する詳細が記載されます。書類は、区分所有建物用(マンション用)土地建物・土地用(戸建て・土地用)に分けられ、物件の種類によって記載事項は異なります。

共通項目

マンション、戸建て、土地の記載事項として共通している項目は以下のとおりです。

  • 雨漏り(天井からのものだけでなく、外壁やサッシ取付部分等からの吹き込みやシミがある場合も記入)
  • シロアリ被害(売買対象の建物、ベランダ、浴室、洗面室なども含めて記入)
  • 建物の不具合(建物全体の傾き、部分的な傾き、木部の腐食、サビ、建築部材、その他不具合を記入)
  • 改築・修繕・リフォーム・用途変更の履歴及び資料(間取り変更・修繕・リフォーム・用途変更を実施しているか否か、実施している場合は実施箇所及び保存している資料について記載)
  • 火災(ボヤ等も含む、隣地からの延焼等で被害を受けたことがある場合も記入)
  • 石綿使用調査結果の記録(石綿を使用しているかどうかの調査結果があるか否か、調査日、調査の実施者、調査の範囲、石綿の使用の有無及び使用箇所を記入)
  • 建物状況調査(建物状況調査を実施しているか否か、実施している場合、保存資料があれば記入)
  • 耐震診断及び地震に対する安全性に関する資料(耐震診断の結果があるか否か記入)
  • 住宅性能評価(新築又は既存住宅の住宅性能評価を受けているか否か、受けている場合、保存されている資料があれば記入)
  • 土壌汚染に関する情報(土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況を記入)
  • 騒音・振動・臭気等(道路、電車、飛行機、工場、店舗等、一般的な観点から判断して気になると思われるものについて記入)
  • 近隣の建築計画(売買物件に影響を及ぼすと思われる近隣の建築計画があれば記入)
  • 電波障害(テレビ、携帯電話等の電波に障害がある場合に記入)
  • 売買物件に影響を及ぼすと思われる周辺施設(ゴミ集積所、ゴミ処理場、暴力団事務所、産業廃棄処理施設、火葬場、墓地等、一般的な観点から判断して気になると思われるものについて記入)
  • 売買物件に影響を及ぼすと思われる過去に起きた事件・事故等(売買物件での自殺、殺傷事件、特殊清掃が行われた自然死等、買主に心理的影響があると思われる事実があれば記入)
  • 近隣との申し合わせ事項(自治会・町内会等での協定やゴミ集積所、自治会・町内会費等の取り決めで特に買主に引き継ぐ事項を記入)
  • その他売主から買主に引き継ぐ事項(表記列挙項目の補足説明や、列挙項目以外で買主に説明すべき事実があれば記入)

区分所有建物用(マンション用)の項目

マンションの場合、管理費や修繕積立金等についても記入する必要があります。

  • 管理費・修繕積立金等の変更予定(管理費・修繕積立金等の変更予定がある場合、時期及び金額などの内容を記入)
  • 大規模修繕の予定(大規模修繕の実施が協議されている場合、詳細が未定であっても、知っている事実を記入)
  • 自治会費等(自治会費・町内会費などの支払いが必要である場合、その徴収される方法も記入)
  • 管理組合集会における討議事項(管理組合集会における決議のよって費用が発生するものや、ペット解禁などの生活環境に影響がありうる事項について討議されている場合に記入)

土地建物・土地用(戸建て・土地用)の項目

戸建てや土地の場合、土地の境界や地盤についても記入する必要があります。

  • 塀、フェンス、擁壁の状態(擁壁等の有無、方角、取り決め、紛争、亀裂等の有無について記入)
  • 越境の有無(越境の有無、越境物、取り決め、紛争等の有無について記入)
  • 地盤の沈下、軟弱等(地盤沈下等を発見しているか否か、発見している場合は状況等を記入)
  • 地中埋蔵物(地中埋蔵物を発見しているか否か、発見している場合は地中埋蔵物の種類・場所・状況等を記入)

物件状況等報告書は売主が家の売買契約前に作成する

物件状況等報告書は売主が売買契約前に作成することが一般的です。

作成者は売主

物件状況等報告書は、原則として売主が作成します。物件の現状について最もよく知っているのは売主自身だからです。そのため、売主が物件の状態や過去のトラブルについて正確に報告し、買主に伝える責任があります。正直な情報提供が行われないと、後から買主とのトラブルを引き起こす可能性があります。

作成時期は売買契約前

物件状況等報告書は、売買契約の締結前に作成されるのが基本です。売買契約を締結する前に、買主が物件の状態やリスクを十分に理解し、その情報に基づいて購入を決断できるようにするためです。契約後に重大な不具合やトラブルが発覚すると、契約不適合責任に基づく問題に発展することがあります。

また、売主にとっても報告書を契約前に作成しておくことは、買主との信頼関係を構築するために有効です。中古住宅の場合、物件の劣化状況や過去の修繕履歴を正直に伝えることで、買主が安心して購入を進めることができます。報告書を提示しない場合、買主が契約に消極的になったり、価格交渉が難航することがあるため、売主の側から積極的に作成を行うことが推奨されます。

物件状況等報告書の書き方

物件状況等報告書は、基本的にチェックリスト形式で作成されます。物件の状況に関する質問に対して、売主が「該当するもの」にチェックを入れ、必要に応じて詳細を記入します。これにより、買主は物件の状態を一目で把握でき、後々の確認も容易になります。

該当するものにチェックを入れる

物件状況等報告書では、項目ごとに質問が設けられており、売主は選択肢にチェックを入れる形式で記入します。例えば、雨漏りの項目について「現在まで雨漏りを発見していない」「過去に雨漏りがあった」「現在まで雨漏り箇所がある」のいずれかを選び、雨漏りがあった場合は、その箇所や修繕履歴を追記します。物件の状況が視覚的に分かりやすく整理されているため、買主が契約前に判断を下す際に役立ちます。詳細な説明が必要な場合、補足を記載しておくことで、買主が後から確認しやすくなります。

人の死の告知に関する事案がある場合

物件で、人の死の告知に関する事案がある場合、告知義務があります。物件状況等報告書で記入が求められる欠陥や不具合等には、物理的なものだけでなく、心理的影響があると推定される事実(事件・事故・自殺等)も含まれるからです。

人の死に係る告知に関し、国土交通省において令和3年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定され、一定の基準が整備されています。国土交通省のガイドラインに基づき、物件状況等報告書(告知書)においても、人の死の告知に関する事案がある場合、以下の項目について記入する必要があります。

  • 事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合には発覚時期)
  • 場所
  • 死因(自然死・他殺・自死・事故死等の別)
  • 事案を理由とする特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合はその旨を記入(亡くなった方や遺族の方等の名誉及び生活の平穏に配慮する必要があるため、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を記入する必要は無し)

>>国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の策定について(外部サイト)

物件状況等報告書を作成する際の3つのポイント

物件状況等報告書を作成する際のポイントは以下のとおりです。

  • 虚偽記載をしない
  • 正確かつ詳細に記載する
  • 既存住宅状況調査(インスペクション)を利用する

虚偽記載をしない

物件状況等報告書に虚偽の記載をしてはいけません。後に買主とトラブルになる可能性が高いからです。売買物件に欠陥や不具合等があれば、物件状況等報告書をもって、必ず買主に説明しましょう。万一、売主が不具合等を知りながら買主に告知しなかった場合、仮に売買契約書で売主が不具合等の責任を負わないとする取決めをしていても、売主は修繕や代金減額、損害賠償、契約解除の法的責任を問われるなど、深刻なトラブルに発展する可能性があります。

正確かつ詳細に記載する

物件状況等報告書は、正確かつ詳細に記載しましょう。売買物件の状況が契約終結時にどのような状態であるか、どのような状態で引き渡されるかは、買主にとって非常に重要な事項だからです。自分の憶測で記載することはせず、分からないことは不動産会社等に確認してから記載しましょう。欠陥や不具合等を買主に説明し、買主がそれを了解、容認したうえで売買契約を締結したときは、その説明した欠陥や不具合について、売主が責任を負う必要がなくなります。物件状況報告書を正確かつ詳細に記載し、売買物件の状態を買主に伝えることは、売主側にも大きなメリットがあります。

既存住宅状況調査(インスペクション)を利用する

物件の状態を正確に把握するために、既存住宅状況調査(インスペクション)を利用することも有効です。インスペクションとは、専門の検査員が物件を調査し、建物の状態を詳細に報告するサービスのこと。インスペクションを利用することで、売主自身が見逃していた物件の欠陥や劣化を発見し、正確な物件状況等報告書を作成することが可能になります。買主に対してより信頼性の高い情報を提供することができるため、スムーズな取引に繋がることも。特に築年数が経過している物件や空き家となっている物件は、インスペクションの利用を検討することが強く推奨されます。

物件状況等報告書と契約不適合責任

契約不適合責任とは、売買契約に基づいて引き渡された物件が契約内容と合致しない場合に、売主が負う責任のこと。物件状況等報告書に虚偽の記載があった場合や、重大な欠陥を隠していた場合、売主は買主から契約不適合責任を追及されるリスクがあります。

契約不適合責任の具体例

例えば、物件状況等報告書で「現在まで雨漏りを発見していない」と記載していたにもかかわらず、実際には雨漏りを発見していた場合、売主は契約不適合責任に基づき、修繕費用の負担や損害賠償を求められる可能性があります。報告書の内容と重大な事実の相違があった場合、最悪、契約解除に発展する可能性もあります。

契約不適合責任を避けるためのポイント

契約不適合責任を避けるためには、物件状況等報告書を正確に作成し、物件の状態や設備の詳細を正直に開示することが重要です。古い物件や空き家になっている物件の場合、過去に修繕が行われていることが多いため、修繕歴もしっかり記載し、買主が物件の状態を理解した上で購入できるようにしましょう。情報の隠蔽や歪曲があると、後に契約不適合責任を追及される可能性が高まります。物件の状況を客観的に確認するために、専門の検査業者による既存住宅状況調査(インスペクション)も効果的です。

物件状況等報告書と一緒に作成する付帯設備表

不動産売買における手付金解除の条件と手続き

物件状況等報告書と一緒に作成する付帯設備表についても触れておきます。

付帯設備表とは物件に付帯する設備を記載する書類

不動産売買において、物件状況等報告書と並んで重要な書類の一つが付帯設備表。付帯設備表とは、物件に付帯する設備(給湯設備、キッチン設備、浴室設備、洗面設備等)のリストを記載する書類のこと。これにより売買契約時に、物件に含まれる設備が明確化されます。付帯設備表があることで、買主は「どの設備が引き渡され、どの設備が撤去されるか」を事前に把握でき、売買契約時のトラブル防止に役立ちます。

付帯設備表の記載事項

付帯設備表の記載事項は以下のとおりです。

  • 給湯設備
  • キッチン設備(流し台、混合水栓、コンロ、グリル、ビルトインオーブン、レンジフード、浄水器、ビルトイン食器洗い機、ディスポーザー)
  • 浴室設備(シャワー、混合水栓、浴室、浴室洗面台、浴室換気乾燥機)
  • 洗面設備
  • トイレ設備
  • 洗濯設備
  • 冷暖房機
  • 床暖房設備
  • 換気扇
  • 照明器具
  • 収納設備
  • 建具設備 等

家の売買では物件状況等報告書を正確に作成しトラブル防止を

物件状況等報告書は、不動産取引において非常に重要な書類であり、売主と買主、双方の理解を深めるためのツールです。正確に作成することで、買主に正しい情報を提供することができ、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。物件の売買は人生で最も大きな取引の一つです。物件状況等報告書の重要性を理解し、トラブルのない売買を成功させましょう。