空き家売買で契約不適合責任を追及されたときの対処法は?瑕疵担保責任との違いも解説

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空き家売買で契約不適合責任を追及されたときの対処法は?瑕疵担保責任との違いも解説
  • 空き家を売却した後、契約不適合責任を理由にクレームを受けた
  • 瑕疵担保責任との違いが分からない
  • 空き家売買でトラブルを防ぐ方法を知りたい

空き家の売買では、後々、契約不適合責任が問題になることがあります。買主から修理費用や損害賠償を請求されるケースも珍しくありません。2020年の民法改正で瑕疵担保責任から変更された新ルールについて、混乱している方も多いのではないでしょうか。

この記事では、契約不適合責任を追及された場合の適切な対処法や瑕疵担保責任との違いなどを分かりやすく解説します

瑕疵担保責任から契約不適合責任に改正され、買主が売主に対し追及できる権利が拡大しました。買主には追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除の4つの権利が認められているため、契約不適合責任について売主側がしっかり理解していないと、取り返しがつかないトラブルに発展することもあります
この記事を読めば、トラブルを未然に防ぐための具体的なポイントや、売買契約後に発生するリスクへの対処法が分かります。最後まで読んで、空き家売買のリスク管理をしっかり押さえましょう。

瑕疵担保責任から契約不適合責任に改正された背景

2020年4月1日に民法が改正され、瑕疵担保責任は契約不適合責任に改正されました。改正された背景は以下のとおりです。

  • 旧民法の瑕疵担保責任には曖昧な面があった
  • 社会情勢が変化し瑕疵担保責任だけでは対応できなくなった
  • 明確な判断基準が必要だった

旧民法の瑕疵担保責任には曖昧な面があった

従来の瑕疵担保責任では、隠れた瑕疵(かし)がある場合、買主は損害賠償や契約解除などを請求できるといった規定がありましたが、どの程度が隠れた瑕疵なのか曖昧な面があり、トラブルに発展することが多くありました

社会情勢が変化し瑕疵担保責任だけでは対応できなくなった

インターネット取引の普及や不動産取引の複雑化、外国人の取引への参入など、社会情勢が大きく変化し、旧民法の瑕疵担保責任だけでは対応できない部分が出てきたため、売主や買主の保護、トラブル予防の観点から条文自体が整理されました。

明確な判断基準が必要だった

改正後は、契約上合意した内容と合致しているかという点を重視する考え方が導入されました。当事者間で取り決めた契約内容との整合性が主たる基準となるため、法的トラブルにおいて、より明確な判断基準が与えられたといえます。

契約不適合責任は売主が買主に対して負う責任

契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときに、売主が買主に対して負う責任のこと。
契約不適合責任のポイントは以下のとおりです。

  • 目的物が契約内容に適合しているかが焦点
  • 買主には追完請求や代金減額請求が認められる

目的物が契約内容に適合しているかが焦点

従来は、瑕疵が隠れたものであるかどうかが主眼でしたが、改正後は、契約内容に照らして目的物が適合しているかどうかが焦点となりました。

改正民法では、売買契約をはじめとする各種契約において、引き渡された目的物(不動産の場合は建物や土地)が契約で約束した種類・品質・数量・権利を満たしていない場合、買主は売主に対して修補や代金減額、損害賠償、契約解除などを求めることができるとしています。

例えば、空き家の売買で、「雨漏り等がない健全な状態」と明記されていたのに、実は雨漏りが発生していた場合、契約不適合となり、買主は売主に責任を追及することができます

買主には追完請求や代金減額請求が認められる

契約不適合責任に基づき、買主には追完請求や代金減額請求などが認められています。瑕疵担保責任では、買主の権利が損害賠償請求と契約解除権と限定的でしたが、契約不適合責任に改正され、買主の権利は以下の4つに拡大しました。詳しい権利の内容については、後述します。

  • 追完請求(修補請求・代替物引渡請求など)
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約解除

瑕疵担保責任は隠れた瑕疵を対象とした売主の責任

瑕疵担保責任とは、売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき、売主が買主に対して負う責任のこと。
瑕疵担保責任のポイントは以下のとおりです。

  • 隠れた瑕疵であったかが焦点
  • 瑕疵には心理的瑕疵や環境的瑕疵など広範な意味がある

隠れた瑕疵であったかが焦点

旧民法では、売主が引き渡した目的物に隠れた瑕疵があった場合、買主は売主に対して損害賠償や契約解除を請求できるとされていました。

隠れた瑕疵とは、買主が普通の注意を払っても発見できなかったような欠陥であり、かつ物の通常の用法に支障が出るような重大な欠陥のこと

例えば、表面上は綺麗でも建物の基礎が大きく割れている場合や、建物の耐震性能が著しく低い場合など、取引前の検査や内見では気がつくことが困難で、かつ重大な問題をはらんでいるようなケースが該当します。

瑕疵には心理的瑕疵や環境的瑕疵など広範な意味がある

瑕疵とは、欠陥や不具合を表す法律用語のこと。不動産の場合、ひび割れや雨漏りなどの物理的瑕疵のほか、心理的瑕疵や環境的瑕疵、法律的瑕疵など広範な意味を持ちます。

物理的瑕疵の例

  • 雨漏り:屋根や外壁の防水が不十分で、雨天時に室内へ雨水が浸入してしまう状態。見た目がきれいにリフォームされていても、内部の防水処理が不十分なことがある
  • シロアリ被害:シロアリによる柱や土台の食害。家の耐久性に関わる深刻な問題
  • 耐震強度の不足:新耐震基準を満たしているはずの建物が実際の耐震検査で基準に満たない、構造計算書に偽装があるなど
  • 給排水や電気設備の不良:風呂場やキッチンの水漏れ、給湯器の作動不良、電気系統の漏電など
  • 地盤沈下・地盤の弱さ:住宅が建っている土地の地盤が弱いと、傾きが発生する。将来の建て替えで改良工事が大きなコストとなる
  • 境界不明確:隣地との境界が曖昧でトラブルになる。測量図と実測が合わず面積が足りないなど

心理的瑕疵の例

  • 事件・事故物件:過去に事件・事故等があり、告知事項ありとされる物件の場合、心理的な抵抗感から市場価格が下がることがある
  • 近隣トラブルの存在:隣人とのトラブルや暴力団事務所の近隣存在など

環境的瑕疵の具体例

  • 騒音・振動・悪臭:不動産の周辺環境が生活に支障を来すレベルで悪い場合など
  • 工場・交通量の多い道路近辺:昼夜を問わず騒音や振動が激しい、排気ガスが気になるなど
  • 畜産施設・ゴミ処理場付近:悪臭や害虫が発生しやすいエリアに住宅がある場合など
  • 日照・景観の問題:高層ビルの建設で日当たりが著しく悪くなる、眺望が大きく損なわれるなど

法律的瑕疵の例

  • 再建築不可物件:接道義務を満たしていない土地や、都市計画法・建築基準法上の制限により新たに建築許可が下りない土地など
  • 違法増築・用途制限違反:建物の一部が無許可増築されている場合や、法令で定められた用途地域で禁止されている用途で使われていた場合など
  • 抵当権設定物件:売主のローンが完済されておらず抵当権が抹消されていない場合など

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは以下のとおりです。

  • 対象が隠れた瑕疵から契約不適合へ変更
  • 買主が追及できる権利が拡大
  • 引き渡し時点に契約不適合があるかが焦点
  • 損害賠償責任を追及するには売主の帰責事由が必要
  • 権利行使の期間制限の変更

対象が隠れた瑕疵から契約不適合へ変更

旧民法における瑕疵担保責任は、買主が通常の注意を払っても知り得なかった隠れた瑕疵が対象でした。表面的には問題が見えない欠陥(例えば、基礎部分の構造欠陥や雨漏りの痕跡が内装で隠れているようなケース)について売主が担保責任を負うという考え方です。

一方で、改正民法で定められた契約不適合責任は、契約で約束した種類・品質・数量等と異なる場合を幅広く対象としています。たとえ買主が契約時に気がづいていた瑕疵であっても、目的物が契約上と適合しないのであれば、契約不適合責任が問われる可能性があります。契約不適合責任の方が適用範囲が広くなっている点が大きな特徴です。

買主が追及できる権利が拡大

瑕疵担保責任での買主の権利は、損害賠償請求と契約解除権でした。しかも、契約解除については、隠れた瑕疵が契約の目的を達し得ないほど重大であることが要件になるなど、買主が取れる手段は比較的制限されていました。

これに対し、改正民法の契約不適合責任では、買主が取れる手段が拡大しました。具体的には以下のような権利が定められています。

  • 追完請求:修補請求・代替物引渡請求・不足分の引渡し請求など、不動産の場合、主に修補請求が該当する
  • 代金減額請求:不適合の程度に応じて、代金の減額を請求できる
  • 損害賠償請求:不適合による損害が発生した場合、その損害を補償するよう売主に請求する権利
  • 契約解除権:不適合が重大で、修補や代金減額などの手段では契約の目的が果たせない場合に、最終的な手段として契約解除が認められる

買主としては多面的に権利を主張できるようになっており、旧民法と比べて、買主の救済手段が拡大・明文化されています。

引き渡し時点に契約不適合があるかが焦点

旧民法の瑕疵担保責任では、契約時点で既に存在していた隠れた欠陥が対象となる考え方でした。契約締結時点で瑕疵が存在していない、または契約後に発生した問題については、売主の瑕疵担保責任が及ばない可能性がありました。

これに対し、契約不適合責任では、契約時点よりもさらに進んで、引き渡し時点に契約不適合があるかが焦点になっています。契約締結後から物件の引き渡しに至るまでの間に発生した問題であっても、それが売主の管理・責任の範囲内であれば、契約不適合責任を追及できる可能性があるのです。
契約から引き渡しまでは、通常、数ヶ月かかるのが一般的です。この間、売主は、物件を善管注意義務(善良なる管理者として要求される注意義務)をもって管理することが求められます。

損害賠償責任を追及するには売主の帰責事由が必要

旧民法の瑕疵担保責任では、売主に過失がなくても瑕疵担保責任を負うという無過失責任に近い考え方がありました。売主が知らなかった瑕疵でも、瑕疵が存在していた以上は買主に対して責任を負わなければならないと整理されていたのです。

しかし、改正民法による契約不適合責任では、損害賠償を請求するためには売主に帰責事由(故意または過失)があることが必要とされました。追完請求や代金減額請求の場合、売主に帰責事由は不要ですが、損害賠償請求は、売主に帰責事由が必要となります。

権利行使の期間制限の変更

旧民法の瑕疵担保責任では、買主が権利行使する期間は、買主が瑕疵の存在を知ったときから1年以内と定められていました。
一方、契約不適合責任では、以下のとおり権利行使の期間制限が変更されています。

目的物の種類・品質に関して契約不適合の場合
買主が契約不適合を知ったときから、1年以内に売主に「通知」すればよく、その後はいつでも権利行使可能
目的物が数量・権利に関して契約不適合の場合
上記のような1年の期間制限はないが、時効により債権者(買主)が権利を行使することができることを知ったときから5年、または権利を行使することができるときから10年、権利を行使しなかった場合、債権等が消滅する可能性がある
瑕疵担保責任契約不適合責任
対象隠れた瑕疵がある場合目的物が契約内容に適合しない場合
買主の権利損害賠償請求権、契約解除権追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、契約解除権
問題となる時点契約時点引き渡し時点
損害賠償請求する際の売主の帰責事由不要(売主に帰責事由がなくても損害賠償請求できる)必要(売主に帰責事由がなければ損害賠償請求できない)
期間制限買主が瑕疵を知ってから1年以内に行使しなければ権利は消滅買主が契約不適合を知ってから1年以内に通知すれば、その後行使可能
瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

契約不適合責任で買主が追及できる4つの権利

瑕疵担保責任で買主が追及できる権利は、損害賠償請求と契約解除権でしたが、契約不適合責任で買主が追及できる権利は以下の4つに拡大されています。

  • 追完請求(民法562条)
  • 代金減額請求(民法563条)
  • 損害賠償請求(民法564条)
  • 契約解除権(民法564条)

追完請求(民法562条)

追完請求とは、売買契約上の目的物に契約不適合がある場合、買主が売主に対して目的物の修補や代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求すること。
不動産の場合、代替物の引渡しは現実的ではないので、修補が一般的です。

例えば、不動産売買で、建物に雨漏りがある場合、まず買主が売主に要求できるのが「雨漏りを修補しなさい」という追完請求です。

改正民法では、買主がとれる手段として追完請求が最優先される傾向があります。不動産の売買契約では、契約を続行すること自体を目的としていることが多く、買主がいきなり契約解除を求めるよりも、まずは修補によって問題が解決できるならそれを優先するという考え方です。
契約不適合について売主に責任がなくても、買主は、追完請求権を行使することが可能です。
追完の具体的方法は、主に以下のとおり。

  • 修補(修理・補修):建物の雨漏りを修理する、設備の不具合を直す、シロアリなどの害虫被害を駆除して構造を補強するなど、物件の不良箇所を修復して契約通りの状態に近づける方法
  • 代替物の引渡し:不動産は、同じものが二つとない性質のため、代替物を用意する方法はほとんどない。新築分譲住宅などでは、工事の一部をやり直す、あるいは代わりの同等性能の素材で作り直すなどの形で対応する場合がある
  • 不足分の引渡し:例えば、土地が100坪あると契約したはずが実測したら95坪しかなかった場合、売主が不足分の土地を追加で引き渡せるのであれば、それを引き渡す場合など

契約不適合があっても、以下のようなケースでは追完請求が認められない、あるいは著しく困難とされる場合があります。

  1. 売主が不適合を修補できない:物件が天災で重大損害を受けてしまい、売主による修復が現実的に不可能となった場合など
  2. 追完が過度に困難または費用対効果が著しく悪い:不具合の修補に莫大な費用がかかる、あるいは修補工事自体が建物の構造上ほぼ不可能に近い場合など
  3. 買主に帰責事由がある:買主が故意・過失で不具合を作出した場合など

①・②の場合、代金減額請求や損害賠償請求、契約解除といった別の手段を検討することになります。
契約不適合責任は、売主の責任が問われる制度であるため、③の場合、追完請求はできません。

代金減額請求(民法563条)

代金減額請求とは、買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告したにもかかわらず、その期間内に履行の追完がない場合、買主が不適合の程度の応じて、代金の減額を請求をすること。
目的物の種類や品質、数量、権利などに不適合がある場合、差額分を値引きする形で代金の減額を請求できます。

例えば、重大な欠陥があり、その修理に相当な費用がかかる場合には、その修繕費相当額を値引きすることが認められる可能性があります。

旧民法では買主が減額請求をするために、厳格な要件や手続きが必要でした。しかし、改正後は代金減額請求が規定として整理され、買主の救済手段として使いやすくなりました

代金減額請求は、通常、売主に対して追完を催告し、追完が行われない場合に代金減額請求へ移行するという流れが一般的です。しかし、改正民法563条2項では、以下のいずれかに該当する場合、買主は催告することなく、直ちに代金減額請求ができると定めています。

  • 追完が不能であるとき:地震や火災などで建物が再建不可能なほど損傷してしまった場合や構造的欠陥が大きく、修復が事実上不可能である場合など
  • 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき:売主が全く誠意を示さず、修理を拒み続け、請求には応じないと態度をはっきり表示した場合など
  • 契約をした目的を達成できないとき:契約の性質または当事者の意思表示により、一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合に、売主が履行の追完をしないで、その時期を経過した場合など
  • 買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

代金減額請求に売主の帰責事由は不要です。契約不適合が、買主の責任であるとき、買主は代金の減額を請求することはできません。

損害賠償請求(民法564条)

不動産売買における損害賠償請求とは、買主が被った損害(修理費用、引越し費用、二重に発生した家賃など)を売主に対して賠償するよう請求すること。

例えば、建物の欠陥によって引越しを余儀なくされた場合の追加費用や、雨漏り修理中の仮住まいの費用、あるいは物件の修理が長引いたせいで予定していた事業が開始できず得られるはずの利益を逃した場合など、損害賠償として認められるケースがあります。

注意すべきポイントは、追完請求や代金減額請求と異なり、損害賠償請求には売主の帰責事由が必要となる点です。旧民法の瑕疵担保責任は、無過失責任に近い性格を持っていましたが、改正民法では、損害賠償請求をするには、売主の故意または過失が必要という要件が加わっています。

改正民法では、損害の範囲として履行利益も含まれることが明確にされています。履行利益とは、契約が適切に履行されたのであれば得られるはずだった利益のこと。例えば、家賃収入を得る目的で不動産を購入した場合、契約不適合のせいで入居開始が大幅に遅れ、家賃収入が減少したケースなどが該当します。

契約解除(民法564条)

契約解除とは、契約自体を最初からなかったことにすること。具体的には、売主は受け取った代金について、受領時から利息をつけて買主に返還し、買主は物件とその使用利益など含め売主に返還することとなります。

不動産取引においては、物件の引き渡しやローン借入などが絡み合うため、非常に大きな影響をもたらします。不適合が重大である場合や、修補が事実上不可能な場合などは、契約を解除して売買関係を解消できる可能性がありますが、契約の目的が達成できない程度の不適合であることが要件になるなど、ハードルは高めで、慎重に扱われます

契約不適合が見つかったからといって、常に買主が自由に契約解除できるわけではありません。軽微な不具合や、修補で十分対応可能な場合、売主に追完請求するのが先であり、解除までは認められません。

空き家売買で契約不適合責任を追及されたときの対処法

空き家を売却した後に、買主から契約不適合責任を追及されるケースは少なくありません。空き家であるがゆえに、長期間人が住んでおらず、不具合や劣化が進んでいたり、売主自身も知らない不具合が存在したりすることが珍しくないからです。売却後に買主から契約不適合責任を追及されたときは、以下のステップを踏まえ対処しましょう。

  1. 原因や責任の所在を明らかにする
  2. 相手の主張を正確に把握して記録化する
  3. 不動産会社を間に入れ相手と交渉する
  4. 不動産売買契約書に沿った対応をする
  5. 解決が困難な場合は弁護士に相談する

原因や責任の所在を明らかにする

契約不適合が生じているとしても、それが売主の管理責任の範囲で発生したものなのか、それとも買主が引き渡し後に生じさせてしまったものなのかを明らかにしましょう

例えば、引き渡し前から雨漏りがあったにも関わらず、雨漏りがないものとして契約した場合、売主の契約不適合が問われます。一方、引き渡し後に買主が改修工事を行った結果、構造を傷めてしまい、雨漏りが発生した場合、売主に責任はありません

原因究明には、建築士や施工業者など専門家のチェックが必要です。専門家が見れば、故障や不具合が外的な力により発生したものなのか、自然に発生したものなのかが明らかになります。
外的な力により故障や不具合が発生したと明らかになれば、引き渡し時、目的物に故障や不具合がないことを疎明できる場合、売主が契約不適合責任を負わなくていい可能性が出てきます

相手の主張を正確に把握して記録化する

買主が契約不適合を主張してきた場合、大事なのは買主の主張を正確に把握し、記録に残すことです。電話や対面での話し合いは、後々「言った・言わない」の水掛け論になりがちです。

メールや手紙など、文章でやり取りを残すことを意識しましょう。相手と直接会う場合も、できれば会話の要点をメモして議事録のような形で残すか、必要があればボイスレコーダーなどを活用し、記録化しましょう。
問題が解決せず、裁判などに発展した場合、やりとりの記録があると有利に進むケースがあります。記録化の作業は面倒ですが、トラブル防止のために必須です。

また、事実関係の整理も重要です。売主として自分の責任ではないと突っぱねたくなる場合もあるかもしれませんが、まずはいつどのように不具合が見つかったか、どの程度の被害や不便が買主に発生しているのか、写真や図面、専門家の意見などを集めて事実を把握しましょう。
売買契約前に作成した物件状況確認書(告知書)や付帯設備表、重要事項説明書、仲介業者の検査結果、過去の修理履歴なども整理し、交渉に備えましょう。

不動産会社を間に入れ相手と交渉する

空き家売買は、不動産仲介会社を通じて契約が成立しているケースがほとんどです。もし買主から契約不適合責任を追及されたら、不動産会社に状況を伝え、どのように対応すべきかアドバイスをもらいましょう
不動産会社は、重要事項説明書の作成や契約書面の確認に関わっているため、取引時点の事情をよく把握しています。

当事者同士の交渉は、どうしても感情的になりがちですが、不動産会社が入ることで話し合いがスムーズに進む可能性があります。
基本的な知識や対応経験を持っている不動産会社であれば、売主・買主双方の妥協点を探る上で頼りになる存在です。

不動産会社のサービス内容によっては、売買後の修補費用を会社で負担してくれるケースもあるため、トラブル発生時は、まず不動産会社に相談しましょう。
ただし、仲介会社はあくまで調整役であり、法的判断や損害賠償の可否を決定する権限はありません。最終的には当事者同士、あるいは弁護士などの専門家の助言を得て解決策を探ることになります。

不動産売買契約書に沿った対応をする

トラブルが発生した場合、売買契約書の内容が最重視されるため、売買契約書に沿った対応を心掛けましょう。売買契約書や重要事項説明書は、契約不適合責任を追及する際の重要な根拠となります。現状有姿取引としていたのか、売主がどの程度の契約不適合責任の負担を負うのか、特約でどのように規定されているかなどを細かくチェックする必要があります。

契約書の中に引き渡し後に売主が負う責任の範囲や免責事項が明記されている場合、それに従って判断される可能性が高いです。
空き家売買では、「契約不適合責任を免責とする」という特約を設けるケースも少なくありません。特に相続物件や築古の空き家など、売主が物件の状態を詳しく把握していない場合は、免責特約を付けることで売主のリスクを軽減するのが一般的です。

ただし、免責特約があっても、売主が故意に告知しなかった重大な事実がある場合、免責が認められない可能性があります。
宅地建物取引業者(業者)が売主の場合、消費者(個人)相手の売買では完全免責は原則として認められないなど、業者・個人の別によってもルールが異なるため、注意が必要です。

買主から契約不適合責任を追及された場合は、契約書に記載されている「引き渡し日から◯◯カ月以内に通知されたものは、売主が不具合を修理する」「雨漏りやシロアリの害は売主が保証する」など条項を今一度確認しましょう。こうした条項があるにもかかわらず放置していると、最悪の場合、契約解除に発展するケースもあります。

契約書の文言が曖昧で、どちらがどう責任を負うのか分かりにくい場合は、不動産会社や弁護士などの専門家に契約書を見てもらい、解釈を仰ぐのが得策です。

解決が困難な場合は弁護士に相談する

買主の主張がどうしても納得できない、話し合いが平行線をたどっている、大きな金額の損害賠償を請求されているなど、当事者同士での解決が困難な場合は弁護士に相談することを強くおすすめします。売買契約は金額も大きく、感情的な対立も起こりやすいため、専門家のサポートが不可欠です。

弁護士は、法律の知識や交渉の進め方、紛争解決手続きに精通しています。「どのような主張が法律的に認められるか」「損害賠償の範囲はどの程度か」「訴訟リスクはあるか」などを冷静に判断してもらうことができます。
自分達だけで解決しようと固執してしまうと、気づけば相手が弁護士を立てて訴訟準備をしていたというケースもあります。もし買主の態度が硬化し、法的手段を仄めかすような連絡が来ている場合などは、早めに弁護士にアドバイスを求めたほうがよいでしょう。

弁護士費用をかけることに抵抗がある方もいるかもしれませんが、長期的な裁判や高額の賠償リスクを考えると、少額の費用でトラブルを防ぐ方が結果的に安く済むことが多くあります。

弁護士費用が心配な場合、各地の弁護士会や法テラスで無料相談や低額相談を受け付けていることがあります。弁護士に正式に依頼するかどうかは相談後に決めることができるので、まずは初回相談を利用して、状況を説明し、見通しを聞いてみるとよいでしょう。

弁護士にも得意分野があるため、不動産トラブルに精通した弁護士を探すことが大切です。実務経験が多い弁護士なら、交渉や裁判の落としどころを把握しており、無駄な争いを避けてくれる可能性が高まります。

空き家売買で契約不適合責任を追及されないために売主がすべき対策

空き家売買では、通常の不動産取引以上に契約不適合責任に関わるトラブルが発生しやすいです。長年放置されていた空き家は、建物の劣化状況や設備の不具合、あるいは所有者すら把握していない欠陥が隠れている可能性が高いためです。
空き家売却を控えている方は不安に思うかもしれませんが、対策をすればトラブルを防ぐことは可能です。契約不適合責任を追及されないために売主がすべき対策は以下のとおりです。

  • 物件状況確認書(告知書)や付帯設備表は正確に記載する
  • 重要事項説明書や契約書の内容を理解する
  • 免責特約を契約書に入れる
  • ホームインスペクションを活用する
  • 既存住宅売買瑕疵保険を検討する
  • 内覧や採寸時など買主と顔を合わせる際は言動に注意する
  • 引き渡し直前に設備等の点検を行い記録化する
  • 空き家の場合は買取売却も検討する

物件状況確認書(告知書)や付帯設備表は正確に記載する

売買契約をする際、売主は物件状況確認書(告知書)や付帯設備表を作成します。これらの書類は、売買のトラブルを防止する上で、重要な役割を果たすため、正確に記載しましょう。

物件状況確認書(告知書)
売主が把握している物件の状況や不具合に関する情報を買主に知らせるための書面のこと。雨漏り、シロアリ被害、建物の傾き・腐食、給排水設備の状態、増改築の有無など、建物の重要なポイントが列挙されており、売主は自分が知っている限りで正直に回答する義務があります。
空き家の場合、売主自身が詳しい状態を知らないことが多々あります。しかし、知らないからといって何も書かないのではなく、把握していないならばその事実をしっかり明記しましょう。

>>【物件状況等報告書とは】家の売買でトラブルを回避するための基礎知識を解説

付帯設備表
建物に付属する設備(キッチン、給湯器、浴室、トイレ、エアコン、照明、インターホン、防水パンなど)について、設備の有無や故障の有無などを回答する書面のこと。
「古いからわからない」とか「動作確認していない」などと曖昧にするのではなく、すでに故障しているものや使用不可のものがあれば明確に記載しましょう。空き家では、給湯器やエアコンが長期間使われていないケースが多く、実際に通電・通水してチェックしてから書くのが理想的です。

>>【付帯設備表とは?】不動産売却時のトラブルを防止!書き方や注意点を解説

物件状況確認書や付帯設備表で、売主が知っている不具合を正直に告知すれば、買主は「この家にはこういう不具合がある」という事実を了承したうえで契約することになります。契約不適合責任は、契約に適合しない事項について発生する責任であるため、契約前に買主が把握し、了承している不具合については、契約不適合責任の対象とはなりません

一方、売主が知っている不具合を隠していた場合、買主は「契約内容に明記されていない重大な不具合が引き渡し後に判明した」と主張でき、売主が契約不適合責任を負わされる可能性が高まります。

物件の不具合を事前に告知することで、売却が困難になるのではと不安に思う方もいるかもしれませんが、正直に告知することで、契約不適合責任を追及されるリスクを減らすことができますし、物件の状態を詳しく説明できる売主は、買主に対して安心感を与えることができるため、結果的にスムーズな売却につながります。

物件状況確認書や付帯設備表は正確に記載しましょう。

重要事項説明書や契約書の内容を理解する

重要事項説明書や契約書は、法律用語などが記載されており、内容の理解が困難ですが、売買において、非常に大切なことが記載されているため、内容を理解するよう努めましょう
不動産取引では、宅地建物取引業法に基づき、不動産会社(宅地建物取引業者)が買主へ重要事項説明を行う義務があります。通常、空き家の売買においても不動産会社が書類を作成し、買主に対し、説明した上で書面を交付します。

重要事項説明書は、買主のために作成されますが、売主も必ずこの重要事項説明書を確認し、物件の情報に間違いや誇張がないかチェックしましょう。
空き家に関しては、境界問題や接道義務、法令上の制限、増改築の経緯など、後々問題になることが多いのですが、不動産会社も誤った情報を記載している場合もあり得ますので、チェックは必須です。

重要事項説明が終わると、不動産売買契約書を締結します。この契約書には、契約不適合責任に関する規定や、免責特約、引き渡し時期、違約金などの重要な取り決めが含まれます
「読んでも難しいし分からないから」という理由で、不動産会社に求められるがまま書類にサインしてはいけません。売買する以上、売主が契約書の内容を熟知しているべきです。不明点があれば理解できるまで不動産会社に質問しましょう。

免責特約を契約書に入れる

売主は契約不適合責任を負わないという免責特約を契約書に入れることは可能です。築古の物件や空き家の売買ではよく使われる手段です。

売主が把握しきれない不具合に対して、責任を負わなくて済むようにするための特約なので、契約書に盛り込むべきか検討しましょう。
長年放置されていた空き家など、予測不能なトラブルが起きやすい物件の場合、免責特約によって「引き渡した後の不具合は一切責任を負わない」と定めておけば、売主のリスクをかなり軽減できます。

ただし、以下の場合は、免責特約があっても無効または制限されるケースがあります。

  • 売主が契約不適合を知っていながら、買主に告げなかった場合
  • 売主に帰責事由がある場合
  • 売主が宅地建物取引業者の場合

契約不適合責任は、任意規定なので、当事者間で合意すれば特別な条項(特約)を設けることが可能です。売主は事前にどんな不具合があるか、できる限り調査し、買主へ告知した上で、免責特約を使うか検討することが望ましいです。

免責特約とあわせて、契約不適合責任の期間を明示しておくことも効果的です。改正民法では、種類・品質に関する契約不適合の場合、買主が契約不適合を知ったときから1年以内にその旨を売主に通知すれば、履行の追完請求等をすることができることになっていますが、1年という期間は、売主からしてみれば酷な面もあります。
当事者間で、期間を短縮し、契約することも可能なため、「引渡完了日から◯◯ヶ月以内に買主が通知をした場合のみ、契約不適合責任を追及できる」といった形にしておけば、売主も安心して契約することができます。

実務としては、給排水管の故障、シロアリの害については、引渡完了日から3ヶ月以内、給湯関係・水廻り関係・空調関係等の主要設備については、引渡完了日から7日以内に買主が通知した場合のみ、契約不適合責任を負うとしているケースが多くあります。

ホームインスペクションを活用する

ホームインスペクション(住宅診断)とは、建築士などの専門家が第三者の立場で建物の状態を調査し、劣化や欠陥の有無を診断するサービスのこと。空き家売買では、屋根裏や床下、基礎、構造躯体など目に見えにくい部分の劣化が進んでいる可能性が高いため、専門的な検査が有用です。
費用は掛かりますが、以下のとおり、インスペクションを行うことで、売主側にもメリットがあります。

トラブル防止
事前に物件の状況を詳しく把握し、買主への告知内容を正確にできるため、引き渡し後の「聞いていなかった」というトラブルを減らすことができる
信頼感の向上
インスペクション結果を開示することで、買主の安心度を高め、スムーズに売却を進められる可能性がある
価格交渉に役立つ
修理が必要な部分があれば、先に売主負担で修補しておくか、その分を差し引いた販売価格を提示するなど、合理的な交渉がしやすくなる

インスペクションにも種類があり、比較的低コストで済むものや、コストは高いですが、精度の高い情報を得られるものがあります。
インスペクションは義務ではありませんが、近年、空き家売買では利用が増加しています。売買後のクレームを大幅に減らす効果が期待できるので、検討する価値はあります。

既存住宅売買瑕疵保険を検討する

既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の売買で契約不適合責任が発生した場合、一定の範囲で保険金が支払われる制度のこと。通常は、保険法人の検査を受けた上で契約し、引き渡し後に問題があれば保険金で修繕費をまかなうといった形をとります。

売主としては、保険に加入しておけば万が一の修補費用の負担を抑えられる可能性があります。また、保険に加入できるということは、その保険法人の検査基準に合格している=一定の品質が確保されているという証明にもなり、買主からの信頼を得ることができます。

既存住宅売買瑕疵保険は任意加入であり、物件の状態によっては加入を断られる場合もあります。空き家で長期間メンテナンスがされていないと、保険の検査に通らない可能性があるので注意しましょう。

内覧や採寸時など買主と顔を合わせる際は言動に注意する

口頭での説明がトラブルの種になることもあるため、買主と顔を合わせる際は要注意。物件の内覧や採寸のタイミングで、買主から「雨漏りはありませんか?」など質問を受けることがありますが、その際に売主が「大丈夫ですよ」と軽率に答えてしまうと、後から「売主が断言したので安心して契約したのに、嘘だった」と責任を追及される可能性が生まれます。

空き家で自分が把握していない点については「詳しくは確認していない」「調査していないので分からない」と正直に言い、むしろ専門家や不動産会社に確認してもらうよう提案しましょう。

「祖父母が昔から住んでいて問題なかったから大丈夫ですよ」など、根拠が薄い安心材料を言うのも危険です。住んでいた当時は、問題なかったとしても、空き家となって劣化が進んでいる可能性が十分にあるからです。

買主との口頭のやりとりは必要があればボイスレコーダーなどで記録化しておきましょう。売買に関わる重要な発言は、後々「言った言わない」のトラブルに発展する可能性があります。買主は、こちらの発言を自分のいいように思い込み「あのとき、こう言ったじゃないか」とクレームを申し立ててくることもあるため、言動には注意が必要です。

引き渡し直前に設備等の点検を行い記録化する

引き渡しの直前に設備等を点検し、動画などで記録化しておきましょう

過去の取引で、引き渡し時に設備の故障がなかったにも関わらず、引き渡し後に、買主が設備の故障を申し立ててきたケースがありました。その際、引き渡し直前に設備を撮影した動画があり、異常がなかったことを証明できたため、売主が責任追及されずに済んだという例がありました。結局は、買主の過失による設備の故障だったのですが、契約書上は、「引渡完了日から7日以内は売主が契約不適合責任を負う」という内容だったため、動画という証拠がなければ、売主側が修補をしなければならないという事態になりかねませんでした。

設備について動作確認を行い、不具合や故障がないか記録化おきましょう。引き渡し直前に、買主と一緒に設備の確認をできるのであれば、一緒に確認を行いましょう。双方納得した上で、引き渡しを完了させ、引渡完了確認書などに署名・捺印をしてもらうと、後々のトラブル防止に役立ちます。

空き家の場合は買取売却も検討する

買取売却とは、不動産会社に直接物件を買い取ってもらう売却方法のこと。空き家で契約不適合責任を負うリスクを極力減らしたいのであれば、買取を検討するのも一つの手です。

通常の仲介に比べて、売却価格は安くなりますが、売主が契約不適合責任を負わずに済む、契約がスピーディーに進むといったメリットがあります。

買取売却は、業者が買主になるため、売却後に第三者(一般消費者)から責任を追及されることはありません。空き家をできる限り高値で売却したいという方には向きませんが、契約不適合責任を負いたくない、安くてもいいから早く空き家の売却を済ませたいという方には、買取売却がおすすめです。

契約不適合責任を追及されたときは、売買契約書に沿った対応をしよう

買主から契約不適合責任を追及され、トラブルになることは、空き家の売買では珍しいことではありません。瑕疵担保責任から契約不適合責任に改正され、物件が契約内容に適合しているかが問われるため、重要事項説明書や売買契約書に書かれている内容はより重要なものとなりました。
不動産関連の書類は専門用語なども多く、理解することは難しいですが、契約不適合責任を追及されないためにも、書類の内容は十分理解し、必要があれば、免責特約を入れましょう。契約不適合責任を追及されたら、まずは原因や責任の所在を明らかにして、不動産会社と相談しながら、売買契約書に沿った対応をしていきましょう。
不動産の売却完了はゴールではありません。新しい所有者にとっては生活や事業のスタートです。後から「聞いていなかった」とトラブルになれば互いに損失が大きくなります。しっかり準備を整えた上で、売却に臨み、スムーズで安心な不動産取引を実現してください。

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